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ラクシャサのキャラが微妙に立っている件について

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※アゲンスト・ザ・デーモン・クイーンに関するネタバレあり

 毎回地図ばかり載せてきた当ブログですが、〈女王との対決〉に限ってはまだネタが残っていますので、今回は文章のみで。

 予備情報なしでクエストに挑戦するいわゆる “バレ無し” では、マップロード中に表示されるタイトルグラフィックが重要なヒントとなります。描かれる敵や風景で先の展開を予想できることがあるからで、つい身を乗り出して見つめてしまうものです。
 その点、〈ライラットの宮殿〉のロード画面に登場するクリーチャーは、その正体を知っている人にとっても、知らない人にとっても、少なからず衝撃的なものではないでしょうか。

 人身虎頭で、掌と手の甲が表裏逆。
 エキゾチックな衣装に身を包み、剣を片手に見得を切る。
 これだけで、知らない人は マスクを被った格闘家かと引きつった笑みを浮かべるかもしれませんし、知っている人なら 「ラクシャサ、キタ――ッ」 と驚喜するでしょう。

 羅刹娑はその名のとおり、ヒンドゥー教に登場する鬼神を出典とする、〈秩序-悪〉属性の魔族です。不思議なことに、オリジナルのD&D(PnP)では数多あるモンスターの中でも飛び抜けて高い人気を誇っています。

 人身虎頭というある一定年齢層以上の日本人には極めて印象的な外見もさることながら、強力な秘術呪文の使い手(Sor7相当)であり、またあらゆる人型生物に変身してしまう恐るべき能力の持ち主としても知られています。また掌と手の甲が人間と表裏逆であることが特徴的で、マップロード画面でも、よく見るとそのように描かれています(→参照)。

 もっともこれだけではフレッシュレンダーのような他の魔族と同列として理解されてしまいそうですので、ここでエベロン設定での羅刹娑について、すこし補足しておきます。

 その前に……

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   エベロン設定というものがあります。  既存のD&Dの世界設定(Grayhawk や Forgotten Realm)で登場してきた存在が、エベロン世界の中では微妙に異なる、場合によっては全く異なる位置づけをされることがあります。これをエベロン設定…と私は勝手に呼んでいます。  これはいわゆる典型的なファンタジーRPGの経験があり幻想世界のクリーチャーに関する知識が出来上がってしまっている人々にとって、落とし穴になりかねないものです。他のファンタジー世界で通用してきた基礎知識をそのままエベロンに持ち込んで当惑する事も無いわけではありませんので、注意が必要です。

 具体的には、たとえば多眼の球魔をはじめとする異形類のモンスターが「〈狂気界〉の軍勢」として位置づけられていたり、古代巨人族がコーヴェアの現代人を遙かに凌ぐ魔法技術水準を有していたり、オークが低脳な豚人ではなく敬虔な森の人で優れたドルイド集団であったり、挙げていったらきりがありませんが、とにかくそういうことです。

***

 さてエベロン設定では羅刹娑地底竜より生み出された原初の魔族で、はるか1,000万年前にさかのぼる〈デーモンの時代〉には地表を統べる支配種族であったとされています。
 神蛇龍種魔族との戦争により力ある地底竜の眷属が地底深くへと封印されたおり、羅刹娑の中の上位種もまた同じ運命を辿りました。
 しかし、より下級の羅刹娑の多くは地表へ逃れ得、再起を期すべくコーヴェア大陸の北西に橋頭堡〈魔の荒地〉を築きました。〈塵の王〉と呼ばれる魔族の王たちが、彼らの今の姿であると伝えられています。

***
   ところで〈女王との対決〉に登場する羅刹娑には〈剣の王子〉という名が冠せられており、GMメッセージでも羅刹娑の王族であることが明言されています。  女王の宮殿で何やってるんだろう、と思いませんでしたか?

 〈剣の王子〉は、宮殿の各分岐の終端にあるグリフのところで幻影体として6度登場し、冒険者たちと6度戦います。その際、数々の意味深な(あるいは妙に説教臭い)言葉を残してゆきます。


 「スコーピオンを崇拝しているのか?私の荒ぶる心をなごませる」
 「その毒は剣の一撃より早く効き、血を汚し、肉体を蝕む…」
 「クィーンの悪行はすばやい。痛みを感じた時には、もう死んだも同然だ」
 「ウルフの剣!なんと謎めいていることか!」
 「飢えは死を意味するが、ひどく飢えたウルフは飽食な猟犬よりも強い」
 「太った駄犬め!クィーンはおまえの魂を喰らい、空腹を満たすだろうよ!」
 「お前の一族は闇につまずき、影に怯え、自分自身をも恐れる…」
 「暗闇がお前を取り囲むとき、ライアットがそこにいる!」
 「モンキーの剣を大切にしているのか?おまえにはぴったりだな!」
 「おまえは、ばかな悪党だ。おまえが憧れる英雄の偽物だ…」
 「おまえが殺した野蛮人のように、おまえにはクィーンのあざけりのみがふさわしい!」

 トリップで転ばせると、正座したまま説教を続けてくるから頭が下がります。

***

 6つのグリフを起動させ、いよいよ女王の玉座に迫らんとするとき、いよいよ彼の実体が姿を現します。
 GMメッセージでは、強大なマリリスのライラット女王が目前にいて側にラクシャサが自信満々に立っている、みたいな内容が出るんですが、ナレーションの方は

You look upon a mighty form of the marilith queen Lailat, a Rakshasa consort stands confidently by her side.
 ヒアリングにはあまり自信がありませんが、だいたいこんな感じ。〈剣の王子〉を consort としているあたり、第一の家来とか、それくらいの地位には居るように見えます。  ところが、いざ戦闘を始めると彼の台詞は


 「レッスンはもう終わりだ。学んだ成果を見せてもらおうか」
 「いい攻撃だった。おまえは闘いが粘り強いな」
 「死を持って私との契約は終わりだ!分かったか、ライラット?私はもうこれ以上おまえの意のままにはならない…」(←倒したとき)

 どうも〈剣の王子〉はライラットに仕えることを強いられていたようです。
 しかし敵のフリをして6度の闘いごとに主人公を強化させ、最終バトルでわざと敗れて主人公は究極進化、虎の仮面を被った謎の師匠の想いを胸に真っ赤に燃えて轟き叫ぶ拳で悪の女王を粉砕、ってこれどこの少年漫画ですか?

 アメコミを見るにキャラ燃えに対する米国人の意識は高いと理解しているのですが、残念ながらこのラクシャサについては、演出があっさりとは言わないものの、ずいぶん中途半端な印象です。
 6分岐×3+ラストバトル×3=21も台詞が用意されているのですから、日本人のライターなら比較にならないほど強烈にキャラを立たせる文章にしてくるはずですが。てゆうかこんなベタなシチュは絶対逃さないだろ……常識的に考えて……。

***

 というわけで羅刹娑に関するヨタ話はこれでお終いです。
 本当はザワビ・オアシスのオルトラン・ソームが持っている「切断されたラクシャサの左手」がどう関わってくるかも考察したかったんですが、これについては情報不足のため断念。

 次回はマリリスについて…書くかも。

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コメント(2)

最後になって文章内容が崩れているのは筆者の感情の起伏そのままです。書いているうちに、キャラ燃えで突っ走らないターバインのライターに怒りが込み上げてきました(自分勝手です。ハイ)

今年もよろしく(遅
あのラクシャサを描き方次第でキャラ燃えに持って行けるのは同意だがね
じっさいそういう設定だったのかについて突き詰めてないじゃん?それが無いとただのファン自己満足というか、キャラオリエンテッドで終わっちゃ貶されるだけだしな

フィーンドとはいえ既に現住属性ついてんのがラクシャサだから、マリリスみたいに召喚されたわけじゃなくて、塵の王の眷属みたいなのがゼンドリックに流れてきたわけっしょ?それがライラットに捕まったならそれなりに迂闊なことしてたんでないの?

どこまでも憶測だけど、俺はむしろ両者のふたつ名である「剣の女王」と「剣の王子(<ペイジ)」という対比に興味があるね 両方とも正位置・逆位置両方で読み解くと面白いぞ

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